麗しの彼を押し倒すとき。



そんな状況を知らない椿は、「それで?」俯いた私を覗き込んでくる。


私は赤くなってしまってるであろう顔を、ふるふると振った。



「あ、えっと、そこで凪ちゃんが実は男の子だったって知ったの」

「…え、まさか俺だけじゃなく凪のことまで男と思ってたのか?」


信じられないというように、椿の口があんぐりと開く。

何だかその姿がちょっと間抜けにも見えた。



「まさか10年近く会ってなかった幼なじみが、実は男の子だったなんて思わないじゃん?」

「いや、普通気がつくだろ」


隙のない突っ込みに、ムッとなって口を尖らせる。



「そんなこと言ったって……みんな女の子みたいに可愛かったし、名前も男女どっちでも使えるんだもん…」


最後の方になると小さくなって、言葉になっていたかは分からない。

だけど軽く息を吐いた椿を見ると、その表情からちゃんと伝わったのだとわかった。



「まぁ、名前は否定できないな」

「でしょ? 凪ちゃん、椿ちゃん、波留ちゃん、なっちゃん。……みんな小さい頃目がくりくりしてて、すっごい可愛かったし。
……私が凪ちゃんと椿ちゃんを女の子だって勘違いしたのも、無理ないと思わない?」

「……柚季の場合は尚更だけどな」

「もー、意地悪言わないでよ! ねぇ、あとの2人もこの学校にいるんだよね?……早く会いたいなぁ…」

「……待て、」


私の話を割って、まるで犬に躾るように言葉を放つ。

椿を見ると、何とも怪訝な顔を私に向けていた。