「はい、あんまり飲みすぎると次は胃がやられちゃうんだからね」
眉をひそめながら言った桃子先生に、「悪い、わかってるから」それらを受け取ると、彼はすぐに錠剤を口に含み水で一気に飲み込んだ。
ごくごくと水が通ると動く喉仏に、やっぱり何だか色気を感じる。
思わずじっと見入ってしまっていたのが分かったのか、一条くんは水を飲みながら視線だけを私に向けた。
……その瞬間、今度は向こうの時間が止まってしまったかのように、一条くんはピタリと固まってしまった。
何かに驚いたようにも見えるその行動に、私にも緊張が走る。
傾けていたグラスが平行に戻され、唇からそっと離されて。
「…柚…季……?」
水で濡れた唇が艶かしく名前を呼んだ瞬間、「へ…?」私からは色気と離れた声が出た。
今日は一体どうしたんだろうか。
一応は前に住んでたからといって、知らない場所に変わりはないのに。
なんだかやけに懐かしい気分になる。
「え、あなた達知り合いなの?」
見つめあったままの私たちの不思議な沈黙を破ったのは、桃子先生だった。
「いや…」返そうとした私の声に、「はい」短いけれどしっかりとした声が被せられる。
いやいやいやいや、知りませんから!
私いつの間にこんな美少年と知り合ってたのさ!
ハッとして彼を見ると、その表情はさっきよりも軟らかかった。

