麗しの彼を押し倒すとき。



中から出て来た人と目が合い、一瞬時間が止まったような感覚に陥る。

ぼんやりした意識の中で、今日は随分目の保養になる人と出会うな、と思った。


さらさらと艶のある漆黒の髪。すらりとした体型に、鼻筋の通った小さな顔。

髪と同様、黒く吸い込まれそうな瞳が私をぼんやりと捉えた。



「桃子、今何時?」


すぐ私から視線を先生に移すと、どこから取り出したのか黒縁の眼鏡をかける。

少し動いただけなのに、その動作にそこはかとなく色気を感じた。



「もうお昼だけど。……一条くん、また寝不足?」

「あぁ、ちょっと最近立てこんでて」

「ここのとこ毎日寝てるものね。昼夜逆転してるんじゃない?」

「……っ、悪い。あれ頂戴」


急に頭を押さえたその人は、一条くんというらしい。

ゆるゆるとこちらに向かってくると、少し辛そうに椅子へと腰掛けた。



「あーあれね、ちょっと待って…」


桃子先生はそれだけで伝わったのか、薬箱のもとへと足を運ぶ。

すぐに戻ってくると、その手には何か錠剤と水が握られていた。