麗しの彼を押し倒すとき。



何だか先生って言うよりは、友達って感覚の方が強い。

誰にでも壁が無いような、すぐに打ち解けてしまいそうな人柄は、さすが生徒との距離が近い“保健の先生”といったところか。

私と話しながらもテキパキと手を休めること無く、処置を施していく。

ひんやりとした氷水が足首に当てられると、幾分か痛みが引いていくようだった。


一通りの手当てを終えた先生が、ふと気付いたように「あ」と私を見た。



「そう言えば私まだ自己紹介してなかったわよね?」そう続けて私から離れると、コーヒーメーカーのある場所まで移動して、器用に豆を補充しながらこちらを向く。



「私、藤原桃子(ふじわら ももこ)。見ての通りここで保健のセンセイやってるの。 うーんそうね、生徒からは桃子とか、もも、ももちゃん、なんて呼ばれてる。 何でも好きなように呼んで?
あ、ちなみに結婚してないし、彼氏も現在いないけど、恋バナとか大好きだからいつでもカモンって感じ。 こう見えて生徒の事とか情報なら、学校一ってくらい知ってるんだから。よくバカっぽいとか言われるんだけどね? 意外と頭脳派なの。

……あ、コーヒーいる?」


香ばしい香りが部屋に立ちこめる。



「……だ、大丈夫です」


コーヒーが出来上がるまでの間、かなり弾丸で喋り続けた桃子先生に開いていた口を一度閉じて、何とかそう返した。

さっきから、なんてつっこみどころの多い先生なんだろう。