麗しの彼を押し倒すとき。




「桃子、けが人」


扉を開けると同時に、凪ちゃんが中にいた人物へと伝える。

ツンと鼻を刺激する独特な匂いと、他とは違う清潔感。

それだけでここが保健室だということが分かる。


ここまでに来る間、周囲の好奇の目に晒されたのと、この高さで運ばれ続けたのとですっかり私は衰弱していた。



「あら、鮫島くん珍しいわね」


中から聞えて来たのは先生だろうか。

肩に担がれているせいで前方の景色が全く見えない。


凪ちゃんはその言葉には返すことなく歩みを進めると、私をそっとソファへと降ろした。


景色が安定したのに落ち着くと、「右足、捻ってる」凪が短く言う。


ベット、机、救急道具、薬箱。

保健室だと認識させるものがこの部屋にはあった。



「あら、可愛い子ね。どこで拾って来たのよ」


視線を彷徨わせ部屋の中を確認していると、すぐ横から少し癖のある声が聞こえた。

その声に誘われるように振り向いた私が、次に視界に取り入れたのは、豊満な胸と私には到底できないであろうくっきりと浮かび上がった谷間だった。



「捻ったの?右足?」


呆気にとられている間に、その大きな胸の持ち主は手当にとりかかろうとした。

私の黒のソックスを脱がせるためしゃがむと胸が持ち上がり、彼女の着ている服のボタンがはちきれそうになる。


あれだけ凪ちゃんの胸がない、ないと騒いでしまった後だけあって、何だか見てはいけないモノを見てしまった気持ちになった。