麗しの彼を押し倒すとき。



私の幼なじみである“凪ちゃん”が本当にこの人であれば、この胸は柔らかいはずだった。

だって私の記憶の中での凪ちゃんは、紛れもない女の子なのだから。


「…胸?」怪訝に聞き返した彼に、私の顔からは血の気が引いてく。



「本当に凪ちゃんだよね?」

「だからそうだってさっきから…」

「じゃあ何で!……どうしよう!やっぱり凪ちゃん、胸がっ」

「……胸がなに、」


胸をまさぐりながら叫ぶと、彼は眉をひそめ聞き返す。



「やっぱりおっぱいがないっ!」

「……当たり前だ」


取り乱している私に対して返されたのは、呆れた様な、とても落ち着いた声だった。



「逆にあったら怖いだろ」と続ける彼の言葉なんて、もう耳にも入らない。


確かに、しっかり男の姿をした彼に柔らかい胸なんて物がついてた方が、衝撃的かもしれないけれど。

でも私にとってはそれが、“あの女の子である”幼なじみの凪ちゃんだという証明だった。


じゃあ一体、この人は誰なんだろう?


彼の瞳の奥にある真意を探りたくても、その心に触れられない。




「……会わない間に肉増えたな」


この人が男ということは、私の知る凪ちゃんではないはずなのに、彼はどうして、私のことをよく知っているような口ぶりで話すのだろう。


呆然とする私の腰の肉を彼がさりげなく摘み、表情も変えずに言ったが、正直今はそんな事、目の前の問題に比べればどうでもいい。

私はその行動を軽くスルーすると、もう一度その胸に触れてみた。