旧校舎?ここがあの西館の旧校舎?


私が言葉を返す前に引手に手をかけた彼は、迷うことなく戸を開く。

カラカラと音を立てて開けた中の光景と共に、とうとうボコられるんだ、と少し諦めにも近い感情が私を包んだ。



「凪さん…そんな慌ててどーしたんすか」


ツンツンと少し立たせた前髪、横に剃り込みが入ったかなり見た目の厳つい男が言う。

旧校舎の二階、3-Eの教室札が掛かった教室の戸を開けると、そこは私とは正反対の生活を送っているであろうガラの悪い男達の巣窟だった。

ざっと見るとこの場にいるのは4、5人。

どうにかして逃げようなんて考えていた私がバカだった。

踏み出した彼の手に引かれ、私も一歩、一歩と部屋に足を踏み入れる。



「凪、その横の女なに?」


足を運んでいた私は、前方から聞えた声にびくりと反応した。

恐る恐る顔を上げると、ふわふわとパーマのかかった明るいクリームイエローの髪をした男が、私を訝しそうな目で捉えている。

棒キャンディーを口にくわえ、男の割に可愛らしい顔つきからは想像できないほど、飛んできた言葉には棘があった。

思わず私の腕を掴んだままの彼を見上げると、ちらりとあの可愛らしい男を一瞥しただけで、その歩みを止めることはない。