「……ねぇ、今それ聞く?」
「え?」
「…しかも気づいてないし、この状況」
無駄に近かった距離を離し、溜息ついた彼は「柚季っちって響き可愛いじゃん。だからだよ」少し笑って廊下の先を歩いていく。
変な人だな。そう思いながら私も後をついていく。
だけど数歩先を歩く彼を見ながら、その後ろ姿に少し感心してしまった。
最後に学校で男の子を見たのは、共学だった中学の時以来だから。
「水瀬くんって足長いねー」
口を割って出た言葉は、ただの呟きになった。
けれど彼にはそれが届いたようで、くるりと振り返り「ほら、着いたよ」そう言って、一つの扉の前で長い脚をアピールするように組んで見せる。
扉の隣に立ち、壁に体重を預ける彼はなかなか様になっていて、さながらコンビニに売ってるファッション雑誌の一ページにでも出てきそうだった。

