麗しの彼を押し倒すとき。



編入早々こんなことで話題になるなんて…本当に運が悪すぎる。

この状況をどう切り抜けようか、痛みと恥で目尻に涙が滲んだ。



「いってー!つーかお前ら加減しろよ…って、やべぇ!」


ざわつく周囲に混じり聞こえた声は、野次馬よりも私との距離が近いのか少し鮮明に耳へと届く。

後方で感じた人の動く気配に、思わず軽く体を強張らせると、私の見ていた世界は急に色を増した。

身体をふわりと抱き起こされた感覚に、やっと地面と接吻なんて地獄から逃れられたと思ったのもつかの間。



「おい、あんた大丈夫?」


無駄に綺麗で整った人間が、無駄に近い距離で私に問いかけた。



「へ…、え?」


いまだ思考が追いつかない私の口は、言葉にならない声を発するだけで、突然視界のほとんどを奪ったその綺麗な顔に、思わず見惚れて固まってしまう。



「いやーマジで悪い。どっか痛む?」


心配そうに私の顔を覗きこむ彼は、真剣すぎて周りが見えてないのかやっぱりやたらと距離が近い。

小首を傾げ彼が「あ、砂付いてる」と、私の唇に親指で触れた瞬間。


周りにいた野次馬の中から、女子の悲鳴に近い声が私を包んだ。