麗しの彼を押し倒すとき。



白い肌に、赤い唇がより一層映える。

凛とした瞳に捉えられると、何故だか呼吸が止まりそう。

視線を彼の腰まで下ろしたところで、ふと冷静になった。



「……っ」


確か同じ物が柚羅の、今の私の家にもあった。

あの形と全く同じ、お兄ちゃんがつい2年前まで毎日のように着ていたらしい制服。

今自分が着用している制服とも、どことなく似ていたりするそのデザイン。


あの制服、愛蘭高校の制服だ。


そう頭で理解した頃には、私は早々にこの場を離れていた。

本当に驚くほど綺麗な顔に、見とれてしまったのは確かだけれど。



「あの人、絶対やばい」


今の一瞬だけで感じる。ああいった人種とは、この先何かない限り関わる事なんて確実ない。

転校ばかりではあるけれど、それでも平凡に生きている私の人生とは交わる事なんて無いのだと。

去りゆく私の背中に彼の視線が向けられる。


そんな視線……全く、知らなかった。