ああ、憎たらしい。

今日も変わらず憎たらしい。

憎たらしいのに、やっぱり少し可愛いこの男が余計に憎たらしい。

だけど、見知った顔に会えて、ちょっと嬉しいと思ってしまった自分が、一番憎い。


もんもんと複雑な感情を持て余してなっちゃんを見つめていると、彼は呆れた顔でこっちに近づいてくる。



「何その顔、超ブサイク」

「なっ!」


あまりにも複雑な感情を抱えすぎたのか、何とも言えない表情をしていたらしい。なっちゃんは私の額に指を当てるとピンと軽く弾いた。

昨日の一件で仲良くなったと思ったのに、なっちゃんはやっぱりなっちゃんだ。

毒吐きなのは変わらない。



「もーあんま毒吐かないでよ。……何か用?波留くんと椿ならいないけど…」

「知ってる」

「え?」

「行くよ」

「ちょ、待って待って待って!波留くん達に用があったんじゃないの?」


なっちゃんはその質問に答えることなく私をちらりと見ただけで、そのまま私の腕を引っ張ると教室を出て行こうとする。

この状況にデジャヴを感じて、つい2日前にも凪ちゃんに手を引かれ教室から連れ出されたことを思い出した。