「んーお風呂上がりはやっぱこれが一番!」


腰に手を当てコップの中の牛乳を一気飲みすると、料理をお皿に盛り付けていた柚羅が笑った。



「柚季は可愛いなー」

「お兄ちゃん、それ外で言ったらダメだよ」

「なんで」

「さすがにドン引きされるから」


柚羅が盛り付けてくれた料理を運びながら、苦笑いでそう忠告する。

普通妹が風呂上がりに牛乳一気飲みしてたら、おっさんか。とかそんなツッコミをしてもおかしくないというのに。

どうしてもお兄ちゃんの頭の中は、理解できないと思った。


「いただきます…」


手を合わせて野菜炒めを口に入れる。今日も柚羅の手料理は完璧だ。

だけど何故か箸が進まないのは、私の心が関係しているのだと思う。



「ねぇお兄ちゃん」

「ん?」


意を決して口を開くと、柚羅が微笑みながら聞き返す。

その表情に一瞬躊躇うも、彼らを知りたいという欲求が私を駆り立てた。


「今日ね、なっちゃんが他校の人に殴られそうになってたの」

「……」

「それに昨日も凪が誰かと争ってたみたいだし…」

「……」

「お兄ちゃんまだ凪たちと交流あるんでしょ?」

「うん」

「だから何か知らないかなって思って……」


最後の方は本当の事を知るのが怖くて、小さくしぼんでしまっていた。

お兄ちゃんは箸を置くと、私の目を見て離さない。


もしも彼らが私の知らない人に、悪いように変わってしまっていたらどうしよう。

柚羅の言葉待つ間、そんな事が頭にこびり付いて離れない。