一行は、ノアの方舟の近くで設計図を眺めていた白ひげの老人に近づいた。



偉そうな風格が漂っている。



『失礼ですが、ノアの方舟保管の関係者ですか?』



ミカエルがそう尋ねようとした途端、老人が先に気がついた。



「これはこれは!!ミカエル様ではあられませんか!!それにイフェフィア様、ザクザガエル様まで!!!あぁ、これは夢でしょうか…」



まるで神を拝むような老人は、地に膝をつき、土下座をした。



「おやめ下さい、私たちは視察に来たのです。土下座されては、まともにお話もできそうにない」



ミカエルがかがんでなだめると、やっと老人は平静を取り戻した。



「いやはや、失敬。この一市民のわしが生涯で神殿の重役の方々にお会い出来るなんぞとは夢にも思わず…………話とは、なんでしょう」




「お尋ねしますが、貴方は方舟の関係者でしょうか?」



「ははあ、その通りでございます!わしは設計士の仕事をしておりましてな、この度何の縁あってか光栄なことに方舟の復元を任されたのです」



老人は目を輝かせながら自分の設計図を広げてみせた。



「復元?!………聞いてないな」



イフェフィアは訝しげにその設計図を受け取った。



「私も聞いておりません。御前の意向でしたら御前会議で議題にあがりそうなものを…」



ミカエルは口元に手をやって、考えを張り巡らせたが浮かばない。




すると、さっきまで話に興味もなさそうだったザクザガエルがいきなり口を挟んできた。




「ねーおっちゃん、その仕事誰に頼まれたの?」



「ずいぶん前のことでじゃったので……わしも物覚えが悪くなりましてのぉ……。確か、お役人さんだったんじゃが…依頼主ではのぅてそのお弟子さんか何かが頼みに来たんだったか………申し訳ない、歳なもので」



老人は自分の頭を三度ばかり叩いた。



「ありがとうございます。またこちらへ伺うことがあるかも知れません。その時はよろしくお願いします」



ミカエルは深々とお辞儀をすると、二人を連れてその場を去った。