「真子、あのさ……」 「うん?」 「いや……やっぱなんでもない」 「……そう」 だったら話しかけないでよ。 洸があたしの名前を呼ぶだけで、あたしは一々ドキドキしたり、嬉しくなったりするんだから。 喜んだあとの、この気まずさはさらにあたしを悲しくさせるんだから。 「俺、帰るな……」 「えっ」 「じゃあ、また明日な」 「ちょっ!洸っ!!」 ――ギュッ 気付いたら洸の服を掴んでいた。