――それにしても。

教室に戻ったのはいいけど、さっきの事があったせいかなんとなく気まずい。


「木原!」


そう言って私の前に来たのは、夏川君だった。

しかも、さっきあったことなんてなかったかのようにいつも通りの笑顔で。


いつもなら話しかけてもらえて嬉しいはずなのに、今は悲しいだけだった。


「大丈夫か?さっきの授業いなかったし、やっぱり具合でも悪かったんじゃないかって、心配してたんだ」

…違うよ。

具合が悪かったんじゃなくて……悲しかったんだよ。

「もう大丈夫だよ。さっきはゴメンね。頭痛くてちょっとイライラしてて……」
「そっか。そんな時に話しかけたりしてごめんな」

「ううん。心配してくれてありがとう」


さすがに本当の事を言うわけにはいかないし…。


嘘ついてゴメンね、夏川君…。



「あ、あのさ。中野と一緒だったの?」



その言葉を聞いて、私はまた胸が痛くなった。