……気がついたら、私達は森林に近い草地のちょうど真ん中にいた。


“魔界にも森ってあるんだ。すっかり砂漠だけかと思ってた”



「陽梁……実はさ、ちょっと気になった道具を見つけてさ」



そう言いながら私は、2つのナイフをリュックの中から取り出した。



「ふーん……ナイフね」



そう言いながら、彼女は鞘からナイフを抜き差ししたり、試しに何かを切ってみたりなど、色々していた。



「とにかく、見つけたの! どうする? 陽梁から取る? それとも、一斉に1本ずつ取る?」



「一斉に取る方がいい。その方が公平じゃん? んじゃ、シャッフルするよ」



陽梁は、再びナイフを鞘に収め、混ぜ始めた。手つきが素早い。なんだか手慣れてる。


「……よし」


「んじゃ行くよ!」


「うん!」




『いっせーのーせ!』



 私達はナイフを手に取った。




“ドクンッ”
 

私がナイフの持ち手に触れた時、何かの波動を感じた。



“どういう意味?”



私はただならぬ気配と波動をこの剣に感じた。





“今の、陽梁見てなかったかな?”



慌てて見ると、陽梁は今夜の寝床を探していた。



 

そうこうしている間に夜が来た。



私達は、陽梁が見つけた寝床で食料を食べ終え、くつろいでいた。




私はナイフを準備しながら言った。



「ちょっと散歩に行って来る」



「……良いけど、襲われても知らないからね」



……陽梁らしい言葉だ。でもそう言いつつ陽梁は絶対に助けてくれる。陽梁のいい所だ。





私は苦笑しながら、茂みの中へと入って行った。例の波動を確かめる為だ。




陽梁がいる場所から、30mほど歩いた。気が緩んだのか、鼻歌でも歌いながら散策していると、突然ある物が無くなった。ナイフだ。何かの拍子に落としてしまったらしい。




「えっ? 嘘、どうしよう」




慌ててさっき来た道を戻る。すると、茂みの中に、何かが光っていた。紫色?いや、これはアメジスト色だ。何かの本で読んだ事がある。宝石の1種だ。そのような事を思いながら茂みを見ると、そこには私が落としたはずのナイフがあった。ナイフから何かに姿が変化している。無理やり止める訳にもいかない。というか止め方が分からないし。止めようがない。



 
それは、1匹のドラゴンに姿を変えた。よく見たら龍だ。龍とドラゴンのハーフ? まぁそんな事はさておき。


ドラゴンは、雄叫びを上げた。


「ちょっと! 静かに! 静かに!」



身振り手振り、ボディーランゲージ全開で私はドラゴンに注意を促した。暫くすると、私の言いたい事が分かったのか、ドラゴンが静かになった。




「あ……あのさ、実は」



私はドラゴンに小声で話しかけ、陽梁の所まで連れてってくれるよう、頼んだ。



すると、私の中に声が流れ込んで来た。



“分かったよ、里依。仰せのままに”



そう言ったかと思うと、ドラゴンはでかい翼をはためかせ、低空飛行で、陽梁の所へ向かった。いつの間にか、木に止まっていた。



“ここ?”


“うんっ……ありがと。本当に感謝してもしきれないよ”


“いいえ。お互い様だよ……僕の名前は、マーク。これからよろしく”




そう言い終わると、ドラゴンは剣に戻っていた。




私は地面に降り立っていた。





マークって言うんだ。かわいい名前。





この事、陽梁には秘密にしとこう。



 


ドラゴンと私。悪くないな。





そう思いながら眠りについた。