あたしの証【完結】

「…………な…つお…」


「その名前を呼ぶな!」


あたしの微かな希望もなつおはぴしゃりと打ち砕く。



「俺は。
毎日毎日。
このタトゥーを見てあの時のことを思い返してた。
お前の名前を入れて、いつか復讐しようと。

このバラの意味。
お前は愛だって信じ込んだみたいだけどな」



はっと嘲笑いながら

「これは一生憎むって意味なんだよ」

なつおはそう、言い放った。



あたしをどん底まで突き落とすにはあまりにも、ぴったりの言葉過ぎて。





ぽたぽたと流れ落ちる涙。
涙腺は崩壊してしまった。
もう、この涙は止まらないだろう。




嗚咽を漏らしながら、あたしは去っていくなつおを見ることしか出来なくて。

行かないで欲しいのに。
あたしはそんなこと言えなくて。


そんな資格、あたしにはなくて。



こんなに好きになってしまったのに。
なつおは。




………なつきは。

あたしを裏切るためだけに今、生きてたんだって。


なんで。
なんで?
なんであたしなの?

どうして?

どうしてあたしなんだろう。

他にも女の子はいたじゃない。
クラスに女の子はいたじゃない。


なんであたしなのよ。
やっと人を好きになるってこと知ったのに。


愛する喜びを…なつきに教えてもらったのに。



あたしは…また無意識にその証を触っていた。



なつきはもう…というよりも最初からあたしのものなんかじゃなかったのに。
この数カ月。
なつきはこの時のためだけに過ごした…。


それも本当なの…?
あのなつきも嘘なの…?




すっごい優しかったなつき。
ねえ。
あれも嘘なの…?



いてもたってもいられなくなって。
あたしはなつきのマンションまで走った。

涙と汗で、きっと化粧はぐちゃぐちゃだし、髪の毛もひどいんだろうな。
でも、そんなこと言ってられない。




無我夢中であたしは走った。