「チッ」

え?



なつおは軽く舌打ちをした後、今まで見たこともないぐらい冷たい瞳であたしを見下ろした。



「…やっと気付いたか」


いつもの優しいなつおからは想像も出来ないほどの低い声。
あたしは目をまん丸にしてなつおを見た。


「意味わからないって感じ?
そりゃそうだよね。
俺、完璧に恋人演じてたもん」



……




は…?
誰なの…?
この人は。

目の前で起きてる事なのに、頭が追いつかなくて。
まるで、何か、ドラマのワンシーンを見てるような気分だ。



「俺から言うつもりだったんだけどな。
あんたのことなんか最初から好きじゃなかった。
俺はあんたが憎かったんだ」



予想外の言葉にあたしは何も言えず、ただ力なくその場にしゃがみこむ。


あまりにもショックなことが起きると…
人間って涙が出ないんだね。