それは凄く小さな写真だった。


その四角い写真の中で、笑うなつき。


黒髪にしたんだね。
あの時と全く変わってない笑顔のなつき。



「……っ…」



苦しいよ…。

なつき…

あたしはその写真を食い入るように見つめる。



夢が叶ったんだね。
きょうさんのお店でもう、彫師として働いてるんだね。


なつきの彫ったタトゥー。
鮮やかでとっても繊細で。
綺麗だった。


あたしはこんなこと思う資格もないかもしれないのに。

だって。
なつきの最初の作品を消してしまった。






また。
あたしは身勝手な一筋の涙を流す。


もう、何度なつきのことを想い涙しただろうか。
なつきはもう、新しい人生をとっくに歩いていて。
もちろん、あたしがいなくても平気で。

あたしはずっと立ち止まったままだから。
前へ進むためには。


他の恋をするしかない。


頭ではわかってんのに。
わかってんだけど。




雑誌を元あったところに戻してあたしは自分の部屋へ向かう。
ここでは泣けない。
ゆうやにもう、心配かけたくない。

零れ落ちそうになる涙をあたしは必死に堪えた。