「ホクロ、どっちにある?」

千珠が椅子に腰を下ろすのを待って、訊いてみた。

「えっ?」

「だから右か、左かって訊いてんだよ」

思わず語気を荒めて言うと、再び千珠の瞳に涙が浮かぶ。

「ああ、悪かったよ。だけど大事なことなんだよ、頼むから正直に答えてくれないか。右か? それとも左か?」

「右です」

「そうか。右か……」

武は遠い記憶を思い出すように目を閉じて、小さく呟いた。

「あの……誰なんですか? その探してる人って?」

千珠はそう言ったあとに、もごもごと口の中で呟いた。

言いたくなかったらいいですけど……。

「知りたいか?」

千珠は武の瞳を見て、はっきりと言った。

「はい」