けれど、

「帰るところなんてないもん」

悲しそうに呟く千華を見て、言い過ぎたことを謝ろうと口を開きかけた時、

視界の隅に銀色の光が現れた。

武はとっさに両腕を顔の前にかざし、その光を遮断する。

右腕に軽い衝撃を受けたあと、床の上でカランという音がした。

床の上には赤いソースの付いたナイフが転がっていて、

Tシャツから伸びる腕にも同じ色のソースが付いていた。

「あんたねぇ、自分が上手くいってないからって千華に当たるんじゃないよ。

あんただって触れて欲しくないことがあるだろう?

それはあんたが一番わかっているんじゃないのかい?」

レイラの声が部屋の中に響き渡る。