千華は「ねえねえ」と言いながら、

どこから持ち出してきたのか、黄緑色の小さなプラスティックの水鉄砲で、

タバコの先端に向けて水を飛ばしてきた。

「あー、うるさい。ガキは外に行って遊んでこいよ!」

無数の水の矢によって、びしょ濡れにされたタバコの吸殻を灰皿に捨て、武は怒鳴りつける。

「ふん、なにさ、自分だってガキのくせに」

呟いて水鉄砲を乱射すると、真っ赤な舌を出してドアを思いきり閉めた。

千華の怒りを代弁(だいべん)するかのように、震えた空気が武の顔に吹きつける。

自分だってガキのくせにか……。

武はかすれた声で呟いて、自分の手のひらを見つめる。

そして同じようにもう片方の手をかざし、

しばらく見つめたあとため息をついて新しいタバコに火をつけた。