「一応お客さんなので勝手に連れ出されるのは困ります」 「おれには関係ないね」 「連邦捜査官ですか?」 由貴を執拗に追う相手は彼らしかいない。 「ああ、そうだ。バッジを見せようか?」 背の低い男だけが積極的に絡んでくる。 「結構です」 「おれを覚えているのかな?」 男が試すように訊く。 「なんとなく」 瑠諏は嘘をついた。 顔に見覚えはないし、連邦捜査官に知り合いもいない。 ただ“おまえを知っている”というニュアンスをにおわせて少しでも有利な状況をつくりたかった。