「ちょっとこれからランチをごちそうしてくれる約束でしょ」


「おまえにも責任はあるんだからな。立会人のくせに処刑を見るのをやめて吸血鬼の坊やなんぞに走るからだ」


「だって吸血鬼が焼ける臭いって最悪なんだもの。薄汚い心を持った人間のいろんな人間の血を吸っているからかしら」

 篠田レミは責任を回避するような言い訳をして再び視線を外に向けた。


 車が第2種人間招待施設に近づいたとき、時間は正午を回っていた。


「あぁ~あ、やっぱり警察が来てるわよ」


 狭い間口で仕切られ、トタン屋根をかぶせた個人経営の町工場が軒を連ねる場所に、パトカーと消防車の赤色灯が忙しなく回転して周囲を不安にさせていた。