タクシーから降りた瑠諏は自分の左腕の裏側をもう一度確認した。


 わずかに見える“シケンカン”という文字。


 気づいたのはタクシーの運転手に棲家の住所を告げたとき。


 左手首のペイントの上からカタカタの文字が前腕に刻まれてミミズ腫れになっていた。


 自分でやったのだろうか?


 試験管の記憶を失うことの重要性は薄れてきたと思っていた。


 だとすると誰がなんのために……試験管のことを知っているのは……。


 瑠諏の悩みは違う悩みが発生したことにより、いったん消えた。