ガソリンの臭いから刺激されたのは恐怖や絶望ではなく、最期にひと目会いたいという純粋で単純な切ない想いだった。 「うぐっ……あがっ」 由貴がもがいて口をふさがれているベルトが邪魔だということをアピールする。 「なんだ?なにか言いたいのか?」 細身の男は作業を中断して後ろに回り、ベルトを口から放した。 「ひとつ言いたいことがあるの」 「なんだ?」 細身の男が迷惑そうに眉を寄せる。