吸血鬼は淫らな舞台を見る



 剣未が携帯を閉じて「面倒くさい奴」と不満をもらした。


「しょうがないでしょ。すぐに記憶が消えちゃうんだから。それに吸血鬼なのに自分の親を知らないなんて切ないじゃない」

 女が瑠諏を擁護した。

 彼のことならなんでも知っているという口振りにも聞こえた。


 モテるのね。


 由貴は少し腹が立っている自分に気づき、知らず知らずのうちに女を睨んでいた。


 その奇異な視線を察知したのか女がこちらを見た。


 嫉妬に近いものが自分の感情に芽生えたことを否定しようと、由貴は白い歯をこぼして密かに笑った。