20XX年、地中深くコンクリートで固められたトンネルに一種異様な生き物が存在した。


 半円状に積み上げられたレンガ造りのトンネルは透明度が欠落して悪臭を放つオレンジ色の雫を隙間という隙間から雨のようにポタポタ降らし、不快な湿気を充満させていた。

 衛生さの欠片もない水滴で背中が濡れても、その生き物は気にする素振りを見せない。


 暗闇での生活が長いのか眼がなく、視覚の存在を否定していた。


 背中には2枚の羽が付いているが、体の大きさからすると頼りない。


 突き出た乱杭歯の先から粘性の透明な液体を垂らすと、闇よりも黒い体とは対照的な真っ白い卵を口からガムでも吐き出すかのように「ペッ」と産み落とした。