「待て、待ってくれ……落ち着くんだ」 男の引きつらせた声と廊下の床を擦ってくる音が聞こえてきた。 その音は確実にトイレ奥の白い漆喰の壁を横切ろうとしている。 原田は固唾をのんだ。 まるで漆喰の壁が映画のスクリーンのように見えてきた。 「いままで待ってくれたのに、どうしてなんだ?」 男の声は遠慮がちな苛立ちと疑問が混在して緊迫感が伝わってくる。 原田は銃口を覗き穴に通した。