吸血鬼は淫らな舞台を見る



「別に注射器が怖いわけじゃないんだよ、ハハハ……」

 お婆さんは曲がっていた腰を伸ばして笑った。


 瑠諏はコートのポケットからケースを取り出した。

 似つかわしくないピンク色のプラスチック製で小学生の女の子が持っているようなペンケース。


 針と綿棒が数本ずつ入っている。


 針の先端をお婆さんの人差し指の腹に軽く刺し、滲み出た血を綿棒で拭き取ってペンケースへと戻す。


 一連の作業には無駄がなかった。