しかし、『戦は男がすること。女は家で男に尽くせ』という考えが染み付いた町では、都からの命令に傭兵の、しかも女の騎士を行かせるのは失礼だとされたのだ。


そのためこれまでブレンダは、正規の任務ではなく、傭兵をまとめる機関の上官から下された、敵が来るとも思えないような町の外れの境界線の警備や、祭りのいざこざが起こらないように警護したりなどと言った小さな任務に参加してきた。


今回の話が来た時も、ブレンダは何かの間違いではないかと疑ったほどだ。


『……!?私に、ですか!?』


『そうだ、ブレンダ・セルベンダス。お前に、この任務を言い渡したいと言っておる』


『しかし……』


『本部からの条件には、正規や傭兵、男女関係なく、この辺りで最も強い者とあった。……私は、その条件を満たす者はお前だと思う』


普段は厳しい傭兵機関長にそんなことを言われて、ブレンダはかなり居心地が悪かったのを覚えている。


しかし、内心は嬉しかったのだ。


(認めてくれていた……)


その傭兵長のためにも、この任務、絶対に失敗させるわけにはいかない。




     *   *   *




窓から外の景色を見上げていたアルディスが、いつの間にか眠りについていたことを、隣にいたオリビアは気付いていた。


(仕方ないわよね、今日の朝は早かったし、ずっと狭い馬車の中で揺られてたら、寝るのも当然だわ)


夜が明ける前に出発するため、アルディスは就寝してから五時間ほどで目覚めなければならなかったのだ。


ちなみに、使用人であるオリビアはアルディスの世話や準備のため、三時間しか寝ていない。


(……まあ、アルディスにとっては寝ている方が良かったのかもしれないけど……)