「絶対、譲らないからな!」
「……いや、譲るも何も……。ってか、運命ってなんだよ」
「俺は運命を信じる!」
「……なんのだよ……」
「だって考えてもみろよイグナス!?晩餐会の時に出会って、美人だったなあって思ってたら、任務でまたばったりだぜ?運命だろ!」
早口でまくしたてるカルロに呆れながら、イグナスはああそうかと納得した。
あの令嬢と使用人、どこかで見たことがあると思ったら、例の晩餐会の二人か。
「……そうか、あの二人か」
すると、カルロは何故か神妙な顔をした。
「…………なあ、やっぱり、あの令嬢の女の子って、あんときの子だよな」
イグナスはカルロの質問に驚く。
「だよなも何も、それ以外ねぇだろ、どう考えても……」
「そりゃそうなんだけどさ、余りにも雰囲気とかイメージとか違ったから、なんか自信なくって……」
イグナスは今朝の少女の様子と晩餐会の時の様子を思い比べてみた。
……確かに、晩餐会のときはおてんば娘だったが、今日はもっと大人しく見えた。
大人しくと言うか……、生気の感じられない顔をしているというか。
「……早起きで元気出なかったんじゃねぇの」
考えても答えが出なかったので、イグナスはパッと思い浮かんだことを言った。
カルロはイグナスに横目で呆れた視線を送ってきた。
「……いや……、わかってたけど、お前かなり失礼だよな。それとも、ただのバカなのか?」
イグナスはカルロの言葉にむっとする。


