と、二人を呼び止める声があった。
揃って振り向くと、そこにいるのはレオドルである。
「……良いですけど、何ですか?」
前回呼び出されて何が起きたかを知ってるので、若干危ぶみながらイグナスは聞き返した。
「あ、俺ら、あの時何か失敗しました?」
一方カルロはまずったと言う顔をしている。
一応失敗はしていない筈だが。……カルロのナンパまがいの行為以外は。
「いやそれではない。あれはよくやっていたとシラヌス少佐も言ってたぞ」
とりあえずはほっとする二人。
「そこで君たちに、また依頼が入った。……と言っても、今度は私からの依頼だがね」
イグナスとカルロは思わず顔を見合わせた。悪い予感しかしないと、お互いの目が語っている。
「実は、ある貴族の令嬢が、隣国プラニアスに留学する事になってね。知り合いのよしみで、私が護衛する騎士を選出する事になったのだ」
「それが俺達ですか……」
二人は驚きの度合いが大き過ぎて、何と言うかもうかえって平静でいた。
それほど、要人の護衛と言うのは危険度の高い仕事なのである。
護衛の騎士を必要とするあたりその令嬢と言うのは襲われたり狙われたりと言った可能性を秘めている者だ。
よって騎士は、常に襲来の危険に備えながら、道中の生活を支えねばならない。
期間的にも肉体的にも精神的にも、前回の晩餐会の護衛とはわけが違う。
普通は、経験値も高く手慣れているベテラン騎士の仕事なのだが。
「一応聞きますけど、何で俺ら何ですか」
イグナスが聞いた。
─75─


