あなたが教えてくれた世界




でもアルディスは、自分でつくりだした殻に閉じこもってる。だからやっぱり、存在の大きいのはリリアスの方なのよ。


これが、アルディスが人形みたいになっている理由の全てよ。






「……私は、二つの人格が早く統合されて安定してほしいと思ってるんだけど……」


「…………」


二人の間にわずかな静寂が訪れた。


オリビアは物憂げに考え込んでいて、アンはたった今聞いた話に口を開けないでいる。


正直、何かはあると思っていたがそれは予想以上だった。


黙って視線を床に落とし、せわしなくさまよわせている。


しばらくして、オリビアがもう一度口を開いた。


「やっぱりびっくりした?」


「……はい……」


「驚くなって言う方が難しいかもね。王女の精神が異常をきたしてるなんて」


アンは、伏し目がちになりながら、オリビアに気になっていたことを問った。


「あの……オリビアさんは、ずっとお嬢様のそばにお仕えしていたんですか?」


オリビアは片目をあげた。


「その顔……何か聞いた顔ね。噂でも流れてる?」


ずばりと言い当てられたアンはたじろいで目を反らした。


それから、小声になって正直に言う。


「はい、少し……」


オリビアはちょっと笑ったようだった。


「良いのよ、恐縮しなくて。真偽が気になるのは当然だわ。それに、アルディスの使用人であるあなたは知るべきだし……。どこまで聞いてる?」



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