「伏せろ!!」


誰かのその叫びに、全員すばやく従う。


しかし、誰一人として何が起きたのか把握できていなかった。


(……奇襲か?)


イグナスはそう思ったが、すぐにそれを改めた。


(……いや、市民の暴動にしては今のは激しすぎる)


あの音と衝撃波から察するに、おそらく小型爆弾でも撃ち込まれたのだろう。


威力と規模が大きめだったから、種類はK2か。


K2はこの戦争のために特別開発されたもので、今戦場で最も使われている武器だ。


進歩した点は、なんと言っても破壊力である。


弾の大きさは手のひらほどだが民家を炎上させるほどの威力があり、軽いので初速と飛距離がぐんとのびている。


彼の推測を裏づけるように、空気に煙の臭いが混じり始めた。


(やっぱり、K2か……?)


だったらなおさら市民ではあり得ない。K2は戦争にだけ使われ、市場には出回ってないはずだ。


「シラヌス少佐!!」


と、ここに来ないで持ち場に残っていた騎士数名が息をきらして走ってきた。


「今のは何事だ」


シラヌスも焦った声で応じる。


「ホール東の外壁にK2と思われる爆弾が撃ち込まれました!!」


周囲の騎士たちが一斉に息をのんだ。


「ここから数キロ先に射撃訓練場がありますので、その流れ弾かと思われます」



        ─49─