今までにない厳しい声に、イグナスがはっとすると、オリビアは両手を握りしめてこちらを睨み付けていた。
「オリビアは俺たちの中で誰よりも長くアルディス様を見守ってきたんだ。それをコヴァート、つい何日か前に出会ったばかりのお前がそれ以上を言うことは、僕が許さない」
ハリスもまた、厳しい目をこちらに向けている。
イグナスは、その威圧感に口を閉ざした。
「……あなたに、何がわかるの」
一拍おいて、静かになった室内にオリビアの震える声が響いた。
「あなたなんかに、アルディスの、何がわかるって言うの!?……私たちの、何がわかるって言うのよ……!……そんなこと、言われる筋合いないわ……!」
「オリビア、落ち着いて」
声を荒げるオリビアにそっと近付き、肩を抱きながらハリスはなだめるようにそう囁く。
それから、室内を見渡して、まだ固さの残る声で言った。
「……もう、大切なことは粗方話し終えた。ごめん、三人とも一瞬出て、宿の前で見張りをしてくれないか?交代制で仮眠をとるから。順番はこっちで決めて、伝えに行くからそれまで待ってて」
「……わかりました」
三人はそれに返事をし、それぞれが違う表情を浮かべながら、静かに部屋を出ていった。
バタン……
扉の閉まる音が響き、部屋にまた、静寂が訪れた。
「…………」
その瞬間、耐えきれないというように、オリビアは崩れ落ち、ぺたんと座りこむ。
「……オリビア、大丈夫?」
ハリスが覗き込むと、先ほどまで怒りに震えていたはずの瞳には、いつの間にか涙が溜まっていた。
「……オリビア……」


