「……なるほどね」
説明を聞き終わって頷くカルロは、先ほどよりはいくばくか納得がいった様子だ。
「……そんなリスクがあるなら、何で今俺たちにそれを打ち明けた?俺たちの中に、皇家に恨みをもつ人間もいるかもしれないだろう」
黙って聞いていたイグナスが口を挟む。オリビアは視線を上げた。
「……そう。だから、私は反対だったの。まだ貴方達の素性をはっきりと知っているわけじゃないから……」
そこでオリビアは言葉を切り、リリアス──アルディスが出ていった扉の方に視線を送る。
「でも、アルディスが、貴方達を信用出来ると言ったから。だから私もそれを信じることにしたの。……ちゃんと根拠もあるわ。闇雲にあの子を信じてるわけじゃない」
もの言いたげなイグナスの視線を受け、オリビアは言われる前に言葉を付け足した。
そして、もう一つの、彼らに話すべきことを語り出す。
「……聖帝神話は読んでいるでしょう?アルディスは、その伝説の力の一つ……読心術をもっているの」
「……!」
その言葉を出すと同時に、全員に衝撃が走った。
「信じられないって顔をしているわね。でも本当よ。アルディスは、聖帝の長男であるイルシオンの子孫であると言われていて、皇家には何代かおきにその力を宿す子が生まれていたそうよ。」
オリビアはふう、と息をついた。
「何度も見てきてる。あの子には、他の人間の感情が、声となって聞こえているの……聞きたくないという彼女の意思に関わらずね」
「待って下さい。それを信じろって言うんすか?俺らに?」
と、ついに我慢出来なくなったカルロが口を挟んだ。
オリビアはゆっくりと彼に視線を向け、口調を変えずに答える。
「信じられないの?……まあ確かに、この状況で信じろと言うのも難しいわよね。ならそれで良いわ。残念ながら、リスクを犯してまであなた達に真実を話した理由に、私たちはこれ以上の説明を持ち合わせていないの。でもアルディスがあなたたちと二日過ごして、嫌なものを感じなかったと、信用出来ると言ったのだから、私にとってはそれで十分よ」


