イグナスは、眉をひそめて相手を見返した。
「……どういう意味だ?」
革命と、生け贄という穏やかでない言葉と、アルディスとが結び付かない。
男は何かを言いかけたが、はっとしたように突然口をつぐんだ。
「……これ以上は喋りすぎだな……お前や私には関係のない話だ。この国の行く末など」
「……?」
後半の、ぼそりと漏らされた言葉がイグナスの耳に残った。
(……『国の行く末』?)
確かに、そう聞こえた。
何故、アルディスが国の行く末と関係あるのだ?
……それが気にかかって、作ってしまった思案する一瞬の隙が、反応を鈍らせた。
「……!!」
先ほど言葉を切ると同時に距離をつめ、男が薙ぐように繰り出してきた剣が、目前に迫っている。
咄嗟に足をひいたがよけきれず、頬に鋭い痛みが走った。
しかし休む暇も与えられず、彼らは続けざまに、四人で連携して襲ってくる。
すぐさま抜刀し、二人ぶんの剣を受け止め、もう一人の攻撃は身を捻って間一髪でかわした。
そのまま後ろに跳んで一旦距離をとろうとしたが、剣を受け止めている二人が、こちらを力で押してくるために動けない。
「くっ……」
思わず、イグナスの口から呻き声が漏れた。
力のぶつかり合いになれば、二対一の上対格差もありかなり部が悪い。
押され、一歩、後ずさった。
(くそっ……)
心のなかで悪態をつく。四人もの手練れを一人で相手するのはいくらなんでも分が悪すぎる。
そこに、リーダー格の男が剣を構え、動けないイグナスに向かって突っ込んでくる。
このままじゃ──避けられない。
どうするべきかと、イグナスの焦りが舌打ちとなってこぼれた、その時。
──やぁ……っ!!
奥から、扉越しにくぐもった甲高い悲鳴が、確かにそこに響いた。


