(大きく振りかぶりすぎで、太刀筋も甘い。動きに無駄がありすぎる……!)
一人目、二人目、と、確実に弱点を見据えながら、彼女は防御のおろそかになっている脇や足を狙って確実に斬っていく。
ザン、ザン、ザンっ!!
続けざまに何人か斬ったところで、無傷なブレンダはきっと顔をあげて周りを睨んだ。
怯んだように人垣がすくむが、しかし退くことはなく、人数を生かして四方を囲まれた。
(人数が多すぎるな……)
背後にいるのであろうカルロも、同じように何人かに囲まれているはずだ。やはり、最初に比べて人数が多すぎる。
それに、未熟な衛兵に混じって、何人か鍛練されたような動きをする者もいた。これは外部からの訓練された援軍が混じっていると見て間違いないだろう。
(やはり、読みは間違ってなかったか……)
ブレンダは唇の端を噛みながら、もう一度敵の人数を見回して、腰からもう一本、先ほどハリスから受け取った刀を抜く。
右手に一本、左手に一本。
二刀流の構えに、敵がかすかにざわめいた。
(……中央にも、二本の刀を操る流派は存在しないようだな)
胸中でかすかに、ブレンダはほくそ笑んだ。
故郷でも、両手に刀を持って無駄なく戦えるのは彼女しかいなかった。
これは、訓練していくなかで自然に身に付けていった、彼女だけの構えだった。
「……さあ、来い」
ブレンダの、低い声が響いた。
ごくり、と、その迫力から無意識に衛兵たちが唾を飲んだ。
──しかし、次の瞬間。
「……行くぞ!」
一人の掛け声によって、囲んでいた人の群れが、一斉に彼女に飛んだ。


