「わああーっ!」
大きな声をあげながら走ってくる大量の敵に対して、カルロは無造作に糸を振るった。
ビシィッ
鈍い金属音を響かせ、一瞬にして目の前が赤く染まる。
「……!」
ブレンダは、先頭集団にいた者たちが、一斉に腕や胴から血を吹き出して倒れていく様を見て驚きの表情をする。
「言ったでしょ?肉も切るって」
再び糸を構えながら、動じた風もなくカルロは声を出す。
敵のほうも、前にいた仲間が一瞬にして倒れたことに怯み、ざ、と一歩後退りをする。
「……怯むな!立ち向かえ!」
と、倒れた者の一番先頭にいたリーダーらしき者が、負傷した腕を押さえて剣を杖に立ち上がりながら叫ぶ。
そこにカルロが再び糸を振るった……のだが。
キィン……
さすがに同じ目には合わないのだろう。一人が咄嗟に剣で庇い、糸は鋭い音をたてながら勢いよくそちらに巻き付いた。
隣のカルロから舌打ちをするような音が聞こえてきた。
「……さすがに手の内は読まれてるし、正面から振るっても意味ないか」
そう呟くと同時、カルロが糸を引っ張って巻き付いている剣ごとこちらに寄せる。
その剣の持ち主がバランスを崩して手を離したのと同じタイミングで、走り出したのはブレンダだった。
抜き身の剣を構え、俊敏に駆けてくる彼女に、騎士たちもいきりたって襲いかかる。
……が。
(甘い……!)
それに怯むことなく、ブレンダは勢いを止めなかった。


