あなたが教えてくれた世界




ハリスはそれに頷き、彼女にそれを手渡した。


その時、彼らの背後──屋敷の入り口の方が、にわかに騒がしくなった。


反射的に全員が振り向いて、門にいた衛兵たちがようやく屋敷まで追い付いたのだということを知る。


それぞれが、手に武器を持ち、必死な形相でこちらに向かってくる。


「……迎え討とう」


彼らを見たハリスが冷静に言う。門にいた人数をみて、全員いれば五分もかからないだろうと踏んだのだ。


だが。


「……いえ、皆さんは先に行って下さい」


眉をひそめて衛兵たちを見つめながら、突然そう口を挟んだのはブレンダだ。


「……ここは私一人でも十分です。先に行って、一刻も早くアルディス様を助けて下さい」


足を前に踏み出しながら、しっかりとした声で背後に語りかけるブレンダ。


その後ろ姿を見ながらハリスは一瞬考える。


確かに事態は一刻を争う。ここで敵に全員足を止められるより、一人を残して自分達は先に進んで残した方が効率は良いのではないだろうか。


……そして、ハリスは頷いた。


「……わかった。ならそうしよう。ブレンダ、ここは任せたからね」


「後から合流します」


凛とした返事を聞いて、ハリスは屋敷の奥の方向に向き直った。


「……よし、僕達は行こう。少しでも早くアルディス様を」


そう言って、ブレンダの意思を尊重するように、駆け足で、奥に向かって行く。