「──皇家が屈したとき、何が起こるかわかりますか?そうです、国家は崩れ、新しい時代、そう。我々による新しい時代が幕を開けるのだ!!」
「我……々?」
呆然としている彼女を前に、エリウスは笑む。
「我々が少数組織だとお思いで?国家への不満はそれほど小さなものだと思っていたのか?答えは否だ。我々は時期を待っていたのだ……そして今がその時期だ。皇国騎士軍は戦争にその大部分の力を注いでいるこの今、我々がひそかに蓄えていた軍事力は皇国のそれを凌駕するはず。そして民衆の不満を煽れば、ますますこちらの勢力は拡大するはず。まるで赤子の手を捻るかの如く簡単に、革命は成し遂げられるでしょう。──お分かりですか、貴方たちの時代はそろそろ終劇なのです」
いつの間にか、慇懃なほどに丁寧であった口調も崩れ、彼は声高に、自らの計画を語っていた。
「……さんざん民衆を愚弄しておいて、よくも利用するなんて言えるのね」
硬い表情で、彼女は言った。
「利便性が高いからですよ。考えようによっては、民衆はなによりも大きな力をもっている。そして、愚かな民は簡単に影響される。操ることさえ出来れば、こちらのものなのだ。──リリアス皇女様、我々のためにその命、差し出してもらえますね」
にこりと、狂気が張り付いたような笑みに、彼女は身をすくませた。
(──本気、だわ)
確信する。彼から、一筋の迷いもないことが、身体の全てで感じられる。
「抵抗するようなら、ここで殺しても構わないのですよ……?死体を磔にするだけでも、結果は期待出来ますから」
そう言って、彼はベッドの上で枷によって自由を奪われた彼女の上に馬乗りになった。手には、どこから出したのか鋭いナイフ。
(この人……私を利用する道具としてしか、見ていない……)
押し付けられた腕から、それが痛いくらいに感覚として流れ込んでくる。


