一瞬、何故今彼の口から根に猛毒をもつテラキビテの話が出たのかわからなかったが、少ししてその意味を理解すると、彼女の目が大きく見開かれた。
「貴方……自分のお父様に、毒を盛っていたの?」
信じられないながらも、確認するように問うと、エリウスはこともなげに頷いた。
「そうですよ。長い時間をかけて、じっくりとね………。今ごろは、療養所でゆったりと体力を戻している頃でしょう」
(それじゃ、エリウスは最初からこれが目的で……?通りで、いくら言っても侯爵にお会いできなかった訳だわ……)
そして彼女は、まんまと彼の罠にはまったということなのだろう。
「……貴方の背後には誰がいるの?そして、一体何が目的なの?」
彼女の問いに、エリウスは口はしを曲げてゆっくりと答えた。
「もうお分かりだと思いますが……シドニゥス公爵などではございませんよ?せっかく貴方を捕まえても、皇王への交渉材料にしようとしか考えられない残念な頭の持ち主に、私が従うとお思いで?」
「……それなら、私をどうしようというの?」
人質にされるとばかり思っていた彼女は、当惑しながら聞き返す。
エリウスの、辛うじて保たれていた穏和な瞳に、凍てつくような冷たさが走った。
「──革命、ですよ」
「……え?」
「貴方の命をもって、革命を起こすのです。貴方の命にはそれくらいの影響力がある。例えば街の真ん中で、大々的に貴方を“処刑”するとしましょう。皇家はすぐ、大軍をこちらによこします。そうなれば、民衆を巻き込んだ大変な事態となるでしょう。そして我々の軍事力を前に、皇家は屈するのです」
目には血走ったような光をたたえ、興奮したように彼は語り続ける。


