オリビアは躊躇うことなく頷いた。
「もちろんよ。方法はハリスに任せるわ。この際、証拠がないとか間違ってたらとか、そんなことは言っていられないもの」
ハリスも頷いた。
「わかった。みんな、聞いていただろうが、これから奇襲をかける。と言っても闇雲に行ってもダメだ。作戦を練るぞ」
「はっ!!!」
三人の若い騎士の号令が重なる。
山の一角に、ただならぬ緊張感が漂い始めていた。
* * *
リリアスの声に、その人物は片方の眉を上げた。
「──おや?どこかで会ったことがあったか?あなたとは初めてのはずだが……」
そう言いつつも、圧倒的有利な位置に立っているという余裕は態度から消えない。
リリアスは真っ直ぐに相手を見据えながら、続ける。
「対面してはおりませんが、本日市場で見かけましたわ……!市場で、派手に騒ぎ立てておりましたよね?」
……そう。
彼女の前に立っているのは、午前中市場である屋台に向かって怒鳴り散らしていたどこかの貴族と思われていた男、その人だった。
リリアスの言葉を聞くと、彼の表情が不快そうに歪む。
「ああ、あそこにおられたんですか。何、休戦をと馬鹿なことを申す愚民が他に影響を及ぼさないように追い払ったまでですよ」


