「前から思ってたんだけどさ、アルディスちゃんって何者なんだろうね」
カルロは、イグナスを見ることなく話を続ける。
「北部の貴族令嬢って言ってたけど、皇王陛下自ら旅の面倒をみるって相当だよ」
「…………」
「シュミットって言ってたっけ?そんな大きな家、北部にあったかな?」
いつもの調子はどうしたんだと言いたくなるような、淡々と言葉を吐くカルロ。
「オリビアさんも怪しいよね。なんだかハリスさんと親しげだったけど、北部のお嬢様付の一介の侍女が、どこで中央の名門貴族嫡子と知り合ったのかな?」
そこで言葉を切り、カルロはこちらを振り向いた。
「イグナスはどう思う?」
その瞳に映る色は、やはりいつものそれとは違う。
「……興味がない」
……が、イグナスはそれをばっさりと切り捨てた。
「護衛対象がどんな立ち位置だろうがどんな貴族だろうが護衛対象は護衛対象だ。仕事内容は変わらない」
「護衛対象……ねえ……」
カルロは半ば呆れたように息をついた。
「イグナスって何か変に冷めてるとこあるよね。どうして?護衛対象だから興味ないったって、もしその相手が悪党だったらどうするのさ」
カルロの目から視線を反らし、イグナスは答える。
「悪党だったとして、どうする?それが任務なのだったら、俺はそれを遂行する」


