特に深い理由もなく、声を尖らせる。
そんなイグナスの態度に、目の前の人物は眉尻を下げた。
「なんか、俺への対応かなり雑じゃない?」
馬の世話をしつつ、カルロの顔を見ることもなく答える。
「気付いてたんだな」
「うわ、否定しないんだ……」
大袈裟に胸を押さえ、傷ついたという主張をする後ろの男に、お前も働けと道具をつき出す。
渋々といった様子でカルロも自分の馬の前に移動するのを見て、自分の作業に集中しようとする。
──が。
「……あ、イグナス、また見てる」
しばらくもしないうちに、カルロがイグナスの方を見て何やら笑みを浮かべている。
「……なんだよ」
「いや、見てるなあと思って」
はっと気付くと、無意識のうちに視線が屋敷の方に向いていたところだった。
「……気になるの?」
二人揃って屋敷の方角に目を向けながら、カルロが問いかけてくる。
「……侯爵家側の対応が釈然としなかったからな」
「そっちじゃなくてさ」
至極真面目に答えたつもりだったのに、何故か拍子抜けしたような声をカルロは出した。
「あの……アルディス?だっけ、あの子のこと、気になるんでしょ?」


