もう一度、侍女にお礼を言うと、彼女は居心地が悪そうにしながら外に出ていった。


(……?)


その様子を見送りながら、彼女は首をかしげる。


何か、居心地が悪くなるような変なことをしただろうか……?


特に何も、おかしいことをした覚えはないのだが。


(……あ、)


不意に思い当たった。


(馴れ馴れしすぎた、かな……)


あまり意識していなかったが、普通の侍女と主人と言うものは、そんなに言葉を交わすことがなかった……のかもしれない。


彼女の周りにいる侍女と言うのが、血を分けた義姉であるオリビアだけだったから、そこら辺の事情がどうなっているのか分からないリリアスであった。


少しだけ反省しつつ、もう一度部屋を見回してみる。今度は、仕掛けなどがないのかを確かめるべく、慎重に。


……しかしやはり不審なところはなく、至って普通の客室だった。


先ほど出されたお茶も何もおかしなところはなかったし、感じる違和感は思い違いなのだろうか?


しかし、やはり安全だと思い込むのは──何故だかわからないけど、胸の奥の警鐘が鳴り響く。


そう言えば……この部屋、内装は全くおかしくないが、位置がおかしい。


屋敷の最上階、その一番奥に位置する部屋。


それはつまり、入り口から最も奥まった場所にあるのではないか。


屋敷に人が沢山溢れているわけではないし……何故、他にも沢山部屋はあるのに、ここなのだろう?