一人が、頬を上気させながら答えた。
「そうなんです。あの方、昔からこの市場にいらしてたんですけれど、最近“オルガノ会”の人と揉め事を起こすことが多くなって……」
「オルガノ会?」
聞き慣れない言葉に、カルロが反応する。イグナスもブレンダも、その言葉を耳にしたことはなかった。
そちらに答えたのは、もう片方の娘だった。
「さっき、テントでこの冊子を配っていた方……あの人のような、戦争に反対して平民で団結しようという目的の組織です。ほら」
そう言って見せられたのは、『オルガノ会』と書かれた冊子。
「……これ、貰っても良いかな?」
カルロが問うと、その娘はすぐに頷いて快諾の意を示した。
「もちろんです。私には必要ないですし──……」
「本当?ありがとう」
カルロがそう言って微笑みかけると、彼女たちは揃って幸せそうな表情をした。
「……それで?あの、馬車に乗っていった方の人は、どこの誰なの?」
気をとり直して、今一度質問をする。
「エリウス様は……どちらかの、お偉いお家の方だったかしら?」
「そうよ、確か……あの若さで当代になったらしいわよ」
「貴族……ってことで良いのかな?どこの家かはわかる?」
確認するようにカルロが問うと、申し訳なさそうに二人とも目を伏せた。


