「害虫って……。ブレンダいつになく機嫌悪くない?俺何かした?」
「何もしてないがお前は害虫だ。それ以上アルディス様に近付くな」
下手をしたら食い殺しそうな光を宿すブレンダの瞳にさすがに怯んだのか、カルロも大人しくそこに立ち止まった。
その間にイグナスは、二人のやり取りを完全に無視して、アルディスの顔を出す窓のすぐ近くに背中を預けている。
ブレンダはカルロに執拗に拘っていたので、そんなイグナスの存在を忘れていたのだった。
アルディスは、窓からすぐ見えるイグナスの姿に、身体が強張るのを感じた。
昨日の漆黒が、すぐそばにある。それだけで、昨晩の声がまた聞こえてきそうだった。
が、イグナスはそんなアルディスに気付くことなく、服の裾で軽く梨をふくと、皮をむくことなくそのまま一口ほおばった。
「……!……皮、むかないの?」
驚いて、思わず声が出てしまうアルディス。
その瞬間「しまった」と思った。
だって、あの底抜けに漆黒の視線が、まっすぐに自分に向けられたから。
しかしそれは一瞬で、その後には、イグナスは何事もなかったかのように視線をもとに戻した。
「……ああ、面倒」
そのまま、前を見ながら答える。
「……皮、不味くないの?」
ここでやめようかとも思ったが、好奇心に負けたアルディスは、こちらを向かないでくれるなら良いかと質問を続けた。
「……嫌いじゃない」


