あなたが教えてくれた世界




「アルディス、いい?これから私は市場で朝ごはんを買ってくるんだけど、その間、絶対にここにいて。昨日みたいにいなくなったりしちゃ駄目。人が多いし、どんな人がいるかわからないのだから。馬車から降りるのもあまり良くないわね」


早口でいっぺんに沢山の事を言われながらも、アルディスはこくりと頷く。


「何か困った事があったら、紫の髪の女の子……ブレンダに言いなさい。ハリスも市場に行く事になってるから」


オリビアは朝食と、底をついた食料の補給に行くのだが、ハリスも、昨日の大雨で道への影響や、ここらへんの治安を聞いてくると言い出したのだ。


アルディスはまた、こくんと頷いた。


それから急にトーンを落とし、囁くようにしてオリビアは続ける。


「……あと、私がいない間にもし嫌な事があったら、絶対に隠さないで私に言いなさいよ」


何を懸念しての言葉なのかわからなかったアルディスは、きょとんとした顔を向ける。


説明のしようもなくて、オリビアは目を反らしつつ言う。


「もしもの話よ。何もなかったら良いのよ」


アルディスは腑に落ちない表情のまま、やはりこくりと頷いた。


「……それじゃ、行ってくるわね」


馬車の扉を開けながら、顔だけ振り向いて言うと、アルディスは見送るように視線を追いかけさせる。


「……行ってらっしゃい」


小さな声が背後から聞こえて、一瞬手が止まった。


「……うん、すぐ帰るわ」


思考が戻ってから、すぐに笑顔を向けて言葉を返すも。


やはり、いつもと違う義妹の様子に、調子が狂うと感じるオリビアであった。